職員室の匂い
僕は職員室の匂いが苦手だった。
小学生だった僕にとって職員室というのは大人しか居ない場所、つまりはアウェイグラウンドなわけだ。
悪いことで呼び出されたわけでもないのに、職員室に居ると何だか怒られている気分になった。
中学生になり、一時期不良に憧れた時期があった。
職員室に呼び出される回数も増え、実際に怒られる回数も増えた。
僕はますます職員室の匂いが苦手になった。
分別を付け大人になったつもりだった高校時代。
多少呼び出しの回数は減ったが、一回につき怒られる量も怒られる重さも増えた。
未だに職員室の匂いには慣れなかった。
大人になったつもりでいたが、結局は子供のままだったのだ。
時は過ぎて現在、僕はコンビニの前でタバコを吸う罪悪感を消すためだけに缶コーヒーを買う。
寒さを缶コーヒーで誤魔化しながら咥えたタバコに火を付ける。
口の中に広がるのは豆の香りとタバコの匂い。
あの日、僕が苦手だった職員室の匂いだった。